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(今回も長文です!)

古代インドには、様々な哲学や宗教宗派がありました。
全てに共通しているのは生命をテーマにしているということです。
西洋が神と人間の関係をテーマに、様々な宗教や芸術が発展したのに対して、インドでは生命と宇宙の関係を考えてきたということです。

タントラ(तन्त्रTantra)とカーマスートラ(कामसूत्र Kāmasūtra)の関係

タントラもカーマスートラも、性を中心に書かれた書物です。
タントラは「性の宗教学」であり、カーマスートラは「性の作法学」ということができます。書物としての成立はカーマ・スートラが先(西暦400年代)で、タントラ経典の方が後(西暦700年頃)です。

実は、カーマスートラという教典は、インドでももっとも古い書物になります。もちろん、思想としては古代インド哲学(始まりは紀元前1500年〜1000年くらい)があり、その哲学・宗教観を書き記したとされるマハーバーラタमहाभारतम् Mahābhārata)は、紀元前500年くらいに書き始められて西暦400年に完成したとされています。ブッダの入滅が紀元前500〜400年くらいなので、入滅頃にマハーバーラタが書き始められて、完成する頃(西暦400年くらい)にカーマスートラも完成したということになります。

一方、紀元前500年くらいから仏教文化が花盛りになると同時に、国教としての地位を奪われたバラモン教がヒンドゥー教(大衆化したバラモン教)に変化し始めます。西暦400年くらいに、いまのヒンドゥー教の形になります。

お、また西暦400年が出てきましね。

その後、地位を脅かされる仏教がヒンドゥー教の教義(菩薩や観音などの神様)を取り入れて密教になります。これが西暦600年くらいです。それでも仏教の地位は低下の一途なので、西暦700年セックス仏教が始まります。セックス(タントラ)仏教が栄えます。

結局、そういった(西洋文化から見てふしだらな)タントラ仏教は、西暦1193年にトルコ(イスラム)の侵攻を受けて寺院や仏教大学が破壊され、ついにはインド仏教は壊滅してしまいます。インド(のタントラ)仏教はチベットへ逃げてチベット仏教になります。

タントラTantraの中のカーマスートラKāmasūtra

さて、タントラの成立時(西暦700年頃)には、すでに古典としてカーマスートラが存在しています。カーマスートラはさらに発展を続けてカーマシュートラという一連の文献になっています。
実は、タントラの中にカーマスートラの記述は、僕は見つけられていません。でも、当然のことながら、タントラはカーマスートラの影響を受けているでしょう。

タントラ思想に関しては、このブログでも何度も出てきて、『タントラに関する情報』にまとめてありますよ。
さて、具体的なタントラでは、女性のエクスタシーの極致こそが涅槃であり、男性は射精せずに女性のエクスタシーを介して涅槃へ達せよとなります。
では、タントラではどうやって「女性のエクスタシーの極致」を得ればいいと考えたのでしょうか。その手がかりは、当然のことながらカーマスートラにあると考えるのが自然ですよね。
つまり、タントラの使われる性技は、カーマスートラを参考に練り上げられているはずです。逆に言えば、タントラの研究者(考案者)は、当然、古典であるカーマスートラの技を試しているはずです。

カーマスートラ(Kāmasūtra)の中身とは

さて、そのカーマスートラの中身はどんなものでしょうか? 僕がカーマスートラを初めて読んだのは今から30年ほど前の20代前半だったと思います。もっと前かな? 最初に読んだ感想は、面白くない本だなぁ、エッチな記述が少ないなぁ、というものでした。

内容は非常に論理的です。地理学的な側面も強く、インド各地の性文化の研究書にもなっています。文中には様々な学説も書き並べられていて、比較文化の書物としても非常に優秀です。50歳を超えてから読むと、これほど機知に富み、深い本は他にないかもしれないと思えます。性技に関しても、各々たった2行程度の中にすごいことが書かれています。

さて、その性技をいくつか紹介します。

例えば、セックスの相性は9種類が挙げられています。性器のサイズを男女共3段階に分け、その組み合わせを研究しているのです。
カーマスートラの体位は64通りと言われますが、実は本文中には、僕が数えた限り次のようになります。

カーマスートラの体位

カーマスートラに記載されている体位を『カーマ・スートラ』(訳:大場政史)の日本語表記と、英語版『Kama Sutra』(リチャード・バートン)の記載を併記しました。
なお、特に記載のない場合は、基本は男性が上か横の体位です。

  1. 広開位”widely opened position”(女性が足を広く開く)
  2. 高開位1”yawning position”(女性が足を広げて高く上げる)
  3. インドラ女位(女性が体育座りで横向きに寝る)
    大場訳は上記だが誤訳だと思われる。
    英語では、「両腿に両膝を折り畳んで重ねて(体育座り)、その折った脚を自分の脇へ置く」つまり、カエルのような格好、もしくはM字開脚。
  4. 閉塞位”clasping position”(仰臥)(男女ともに足を伸ばす)
  5. 閉塞位”clasping position”(横臥)(閉塞位で横向き)
  6. 閉塞位で圧迫位”pressing position”(閉塞位で、女性が腿で締め付ける)
  7. 閉塞位で交叉位”twining position”(閉塞位で、女性が片脚を男性に絡める)
    これも誤訳と思われる。英語では「女性の両腿を男性の片腿にtwiningする。つまり巻きつける」とある。twiningは「巻きつく、絡める」の意なので、「巻き付き位」の方が良いと考える。
  8. 牝馬位”mare’s position”(閉塞位で、女性が膣で締め付ける)
  9. 上昇位”rising position”(女性が両脚を直立)
  10. 高開位2”yawning position”(女性が脚を男性の肩にのせる)
  11. 圧迫位”pressing position”(女性が脚を折り曲げて男性の胸に押し付ける)
  12. 半圧迫位”half pressing position”(上記で片脚のみまっすぐに伸ばす)
  13. 竹割り位”splitting of a bamboo”(女性が片脚だけ男性の肩に乗せ反対の脚はまっすぐ。それを左右交互に繰り返す)
  14. 釘打ち位 “fixing of a nail”(女性が片脚だけ男性の頭の上に置き、片脚はまっすぐに伸ばす)
    これも誤訳かもしれない。「女性が片脚だけ自分の頭(the head)の上に置き、片脚はまっすぐに伸ばす」だから、続く説明に、「これには練習が必要だ」とあるのだろう。つまり、新体操のように女性が片足をまっすぐ片脚を伸ばして自分の頭に付ける体位だ。
  15. 蟹位”crab’s position”(女性が両脚を折り曲げて自分の腹部に密着させる)
  16. 密閉位(女性が両腿を交差させる)
  17. 蓮型位”lotus-like position”(女性が左右の脛を交叉させ、あぐらのようにする。
    ”lotus-like position”は「あぐらのような体位」)
  18. 回転位”turning position”(日本語訳は破綻。英語から訳すと、「挿入したまま男性は振り向くように反対を向き(上半身のみ)女性を喜ばせ続ける。その時、女性は男性を背中から常に抱き付く」ヨガのポーズのようだろう。
  19. その他、名称だけで「横臥位”lying down”」「座位”sitting”」「立位”standing”」
  20. 日本語訳なし”supported congress”(互いの体を支えにしたり、壁や柱を使ったりして立ったまま性交する。「支え性交」)
  21. 浮上位”suspended congress”(男性が壁に寄りかかり、両腕を組み合わせて女性を乗せる。女性は男性の首に抱きつき腿を開いて男性の腰を押し付ける。女性は足裏を壁に付けて踏ん張り(腰を)動かす)
  22. 牡牛位”congress of a cow”(これも誤訳。cowは雌牛。男性が牡牛のように四つん這いの女性に後ろから覆い被さり性交する)
  23. 上記につき、犬、ヤギ、鹿、ロバ、猫、虎、象、イノシシ、馬などを真似ても良い。
  24. 複合交”united congress”(2人の女性とのセックス)
  25. 牡牛群交”congress of a herd of caws”(これも誤訳で雌牛群交。複数の女性と交わる。乱交)
  26. 下等性交”lower congress”(アナルの性交)

以上が、カーマスートラに出てくる体位です。ただ、お分かりのように、23番以降は体位ではなくバリエーションです。
つまり、俗に64種類の体位と書かれていますが、64がインドの縁起がいい数字なので、そう書かれているだけか、誰かが誤訳したのだと思います。
カーマスートラで女性が男性を喜ばせる技として64種の芸技があるとされ、これは音楽や作詞やマッサージなど64種が挙げられています。
つまり、カーマスートラの性技(体位)としては、上記22種程度だと思います。

カーマスートラの女性が上のポーズ

ただ、これだと女性が上になるポーズがありません。この点についてカーマスートラは、女性が男性のように振る舞う、女性が男性のポジションにつく、とあります。本文に記載はありませんが、理屈上で上記の体位で女性が上になってもできるのは、
1(両脚を広げて男性の上に座る。普通の騎乗位。女性が膝を床に着く)
3(カエルのような格好で男性の上に座る=体育座り)
4(女性が上で、男女共両脚を伸ばす)
6(4の状態で女性が腿を締める)
7(4の状態で女性が男性の片脚を両脚で絡める)
8(4の状態で膣を締める)
9(女性が脚を前方へ投げ出して男性の上に座る)
10(女性が両脚を男性の肩に乗せた姿勢で座る)
11(女性が正座で男性の上? できるかなぁ?)
12〜14は、前後180度開脚っぽいですね。できるかなぁ。
15は騎乗位で女性が男性に胸を合わせる。抱きつく感じかな。
16も、できなくもないかな。動きにくいけど。
17男性の上であぐら。動きにくそう。
21は、女性を壁に押し付けて挿入かな。

いずれにせよ、全部足しても64種にはならないですね。

タントラの体位は?

さて、タントラに使われる体位はどれでしょうか? タントラの思想では、どれか1つに決めない、ということです。どれでもいい。ただ、長時間の性交ですから、自ずと体が楽な体位しか選べないですよね。
実は、カーマスートラには、体位だけでなく、挿入の技が詳しく書かれています。これは、非常に機知に富んでいます。角度、どこを擦るか、などなど。こちらの方がタントラに適していると思います。
この点は、次回に。

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1 コメント

  1. ピンバック : カーマスートラ研究3『男性の技』 | 瞑想LOVE

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